弁護士を選ぶ際、特に「私選弁護士」と「国選弁護士」の違いを理解しておくことは重要です。どちらも被疑者や被告人の法的な助けを提供する存在ですが、その選任方法や費用負担、活動範囲などに大きな違いがあります。今回はそれぞれの特徴とメリット・デメリットを解説していきます。
私選弁護士と国選弁護士の違い
弁護士費用
- 私選弁護士:私選弁護士を選ぶ場合、その費用は依頼者(被疑者や被告人)が負担します。弁護士費用は自由に設定されており、依頼する弁護士と交渉の上で決まります。相場としては、初回の相談料が数千円から数万円、弁護活動にかかる費用は事件の内容や難易度、担当弁護士の経験などによって異なります。高額になることもありますが、その分質の高いサービスが期待できることもあります。
- 国選弁護士:国選弁護士は、国が選任する弁護士で、原則として費用は国が負担します。これには「経済的に弁護士を雇うことができない場合」に限られます。被告人が一定の条件を満たせば、国選弁護士の利用が可能です。ただし、国選弁護士が担当する事件においても、弁護士費用の一部(例えば、着手金や実費)を依頼者が負担することがありますが、基本的には無償での支援が受けられます。
選任条件
- 私選弁護士:私選弁護士は、依頼者が自由に選ぶことができます。知名度や実績を重視して選んだり、専門的な知識を有する弁護士に依頼したりすることができます。自分のニーズや事件の性質に合った弁護士を選ぶことができるため、選任に関して特別な制限はありません。
- 国選弁護士:国選弁護士は、経済的に弁護士を雇うことができない場合に利用できます。選任条件として、まず「経済的な要件」が満たされることが必要です。また、国選弁護士は原則として被疑者が留置されている際、あるいは起訴後の裁判においてのみ選任されます。選任のプロセスは、裁判所が適当と判断した弁護士を指名する形になります。
選任方法
- 私選弁護士:依頼者自身が弁護士を選び、直接契約を結びます。インターネットや知人の紹介、過去の実績などをもとに弁護士を選定し、契約書を交わして正式に依頼します。
- 国選弁護士:経済的に弁護士を依頼できない場合、裁判所が指定します。選任は被告人の申し立て、または裁判所の判断で行われますが、被告人が希望する弁護士を選ぶことはできません。
活動範囲
- 私選弁護士:私選弁護士は依頼者と自由に契約を結ぶため、依頼者の希望に基づいて活動します。事前の調査や捜査段階からのアドバイス、裁判での弁護活動に加えて、弁護士自身の専門性や得意分野を活かした戦略を立てることができます。また、必要に応じて専門家や証人を立てることもできます。
- 国選弁護士:国選弁護士も基本的に依頼者をサポートする活動は行いますが、資金的な制約もあり、私選弁護士ほど柔軟に活動できるわけではありません。十分な時間やリソースを割くことが難しい場合もあるため、裁判においてはあらかじめ準備していた主張や証拠を基に進めることが多いです。
私選と国選、それぞれのメリット・デメリット
私選弁護士のメリット
- 自由に弁護士を選べる:自分のニーズに合った弁護士を選べるため、安心して相談することができる。
- 高い専門性:特定の分野に強い弁護士を選べるため、専門的なサポートが受けられる。
- 対応の速さ:私選弁護士は、依頼者との直接契約のため、迅速に対応してくれることが多い。
私選弁護士のデメリット
- 費用が高い:弁護士費用が自己負担となるため、経済的に負担が大きくなることがある。
- 選ぶ手間がかかる:信頼できる弁護士を選ぶには情報収集が必要で、時間や労力がかかる。
国選弁護士のメリット
- 費用がかからない:経済的な負担を心配することなく、無償で弁護活動を受けられる。
- 公平性:国選弁護士は裁判所によって選ばれるため、公平に取り扱われることが保証されている。
国選弁護士のデメリット
- 弁護士の選択肢が限られる:選任される弁護士を選ぶことはできないため、自分が納得できる弁護士であるとは限らない。
- 対応に限界がある:国選弁護士は時間やリソースに制約があるため、十分な準備や戦略を立てるのが難しい場合がある。
弁護士費用の相場
私選弁護士の費用相場は、正直ピンキリです。各弁護士事務所や都内や地方などの地域によっても料金は違いますし、事務所によって費用の考え方も若干変わってくるため、下記はあくまでも私視点での目安相場です。
またよく相場は約100万などともいわれますが、起訴前までなのか、公判事件化した場合、また第一審の判決に不服があり控訴するのかしないのかでも、追加料金もかかってくるので、費用は裁判が長引けば長引くほどかかるものだと思っておけば良いと思います。
私選弁護士の費用について
相談料 | 初回相談 | 無料~1万(1回) |
着手金 | 初回着手金 | 60万 |
公判事件化した場合、追加着手金 | 20万 | |
報酬金 | 示談成立時 | 30万 |
身柄解放時(被疑者段階) | 20万 | |
不起訴処分時(被疑者段階) | 60万 | |
無罪判決時(被告人段階) | 110万 | |
求刑より減刑時(被告人段階) | 60万 | |
保釈成功時 | 20万 | |
日当 | (期日当日・直接交渉時・接見) | 3万(1回) |
実費 | 印紙郵券代、弁護士会照会費用、交通費など | 都度請求 |
上記にも記載あるように、これらはあくまでも目安であり、実際の契約する弁護士事務所によって料金は異なります。
当番弁護士とは
当番弁護士とは、逮捕・勾留された際に、24時間対応で刑事事件の初期対応を行う弁護士です。日本の警察署や拘置所に設置された制度で、逮捕された人が弁護士と早期に接触できるようにしています。具体的には、逮捕された被疑者が弁護士に相談できる権利を保障し、被疑者の権利を守るために活動します。
逮捕された際に警察からも説明があるかもしれませんが、私たちの権利として1度だけ無料で読んで相談することができます。
当番弁護士は初回相談に限られる場合が多く、長期的な弁護活動や裁判の進行を依頼する場合は、私選弁護士や国選弁護士に依頼を切り替える必要があります。
後悔しない弁護士の選び方
弁護士選びは重要なポイントです。後悔しないために注意すべきことは以下の通りです。
- 信頼できる弁護士を選ぶ:自分が安心して相談できる弁護士を選ぶことが大切です。疑問点や不安があれば、遠慮せずに質問しましょう。
- 専門性を確認する:自分の事件に特化した弁護士を選ぶことが重要です。刑事事件に特化した弁護士や、特定の犯罪分野に詳しい弁護士を選ぶと良いでしょう。
- 料金体系を確認する:料金に関する透明性があり、納得できる金額であるかどうかを確認しましょう。私選弁護士の場合、事前に見積もりをもらうと安心です。
まとめ
私選弁護士と国選弁護士は、それぞれにメリットとデメリットがあります。私選弁護士は自由に選べる分、費用が高くなることがありますが、高い専門性や対応のスピードが期待できます。一方、国選弁護士は経済的な負担がない反面、選べる弁護士が限られ、リソースに制約がある場合もあります。
自分の状況に合った弁護士を選ぶことが、事件を有利に進めるためには非常に重要です。もし後悔しない弁護士選びをするためには、信頼できる弁護士を選び、事前に十分な情報を収集することが大切です。